研究概要 |
サッカーにおいてより速いボールを蹴ることは重要な能力のひとつである。日々のトレーニングを通じて選手達は以下に足部と脚の運動量を効果的にボールに伝える術を習得する。本研究では、子どもから青年期までのサッカー選手を対象にインステップキックにおけるボールインパクトの特性の横断的な変化を概観した。 8歳~24歳までの選手(プロ選手を含む)を対象に2台の超高速度カメラを使い、ボールインパクト局面における下腿部、足部、ボールの動きを毎秒2000コマの速度で撮影した。3次元映像解析法から足部の3次元的な動きを定量化するとともに、よいボールインパクトの指標であるボール/足部速度比を求めた。さらにボールインパクトに有効なstriking mass(有効質量)との関係を求めた。 ボールインパクト直前の足部速度、ボール初速度、ボール/足部速度比は年齢とともに一定の増加傾向を示した。ボールインパクト中の足部の動きは年齢を問わず、ほとんどの被検者で底屈、外転、外反していた。本研究ではAsami and Nolte(1983)による足関節の固定具合がよりボールと足部のインパクトの重要な要素であるという示唆とは異なり、前述した受動的な足関節の動作とボール/足部速度比との有効な関係をみつけることができなかった。(足部)有効質量は、被検者の体重(r=0. 89),足部質量(r=0. 91)およびボール/足部速度比(r=0. 89)と強い相関を示した。 Lees and Nolan(1998)は、足関節の固定により、足部のみならず下腿部の質量を有効質量に加えることができると推測しているが、本研究の結果からは、足部がボールにその重心付近の適切な位置でインパクトするならば、サッカーインステップキックのボールインパクトは、ほぼボールと足部のみの衝突であると考えることができた。 したがって、身体のサイズ≒足部の質量は、ボールインパクトの効率に大きな影響を与え、特に身体のサイズが小さい子どもはこの観点から技術的ではなく、物理的なハンデがあると考えられた。
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