本年度は、国境を越えて移動し、異国に定住ないしは半定住する人々にとって、スポーツが彼らの内向きおよび外向きのアイデンティティ形成に際して果たす社会・文化的な意義や役割に注目し、資料の収集と関係者への面接を中心に調査を行った。具体的には、以下の項目について調査を実施した。 1.オーストラリアにおける南欧・東欧からの移民コミュニティにとってのサッカークラブの意義と役割について、豪メルボルンのビクトリア大学とモナッシュ大学の研究者と情報・意見交流を行った。また、昨年に引き続き、実際にサッカークラブを訪問し、運営に関係している人たちや試合観戦者に対して聞き取りを行った。今回は特に、ドイツ系の移民によって結成され、地域リーグに加盟するクラブを中心に調査を行った。その結果、主たる構成員が第二世代以降に移った後も、民族のアイデンティティ形成のために機能しており、活動は多岐にわたることがわかった。 2.日本における外国人の帰属意識とスポーツの関係について、引き続き調査を行った。特に、韓国やモンゴル、中国など東アジアの人々の間でのスポーツの役割に注目し、資料収集を中心に調査を行った。その一部を、豪メルボルンのビクトリア大学のセミナーで、「Contemporary Issue in the World of Sumo」と題して報告した。
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