太研究では、「多元的情報を保持し、瞬時に最適方略を撰択し、遂行する」能力を同時的情報処理と捉え、これに共通する特徴として、まとまりのある行動といった目標性・一貫性、ある状況を乗りきるのに最適化された行動をいった意味での即応性・適応性、ひとたび行動が開始されると最終目標まで一気にその行動の構成要素が連続的になされるといった無意識・自動性、少ないリソースで最大の効率を上げるといった意味での省資源性・効率性の四つを仮定し、体育スポーツ場面における瞬間の認知やプレーの適切性を論じる上で、今年度は視線移動と反応時間を基に、実証的な根拠を提供することを目的とした。 複雑な場面での状況判断では、抑制性の信号が伴わない確率的顕著性マップモテルが用いられているととが示された。視線移動のパターンの違いから3つのパターンに分類でき、各パターンにおいてパフォーマンスの優劣差はみられなかったが、種目の特徴を示唆する結果をえた。また、個人について比較した場合、パフォーマンスによってパターンの占める割合が異なっていた。これらの結果から視線パターン自体に優劣差はないが、課題に合ったパターンを見極め、選択することが課題遂行の効率を高めることになり、パフォーマンス向上につながることが示唆された。課題に合った視線移動パターンをどの様に見つけるか、特に、探索ストラテジーについて今後検討が必要ではあるが、状況判断能力の入力過程におけるパフォーマンス向上への重要な手がかりの1つであることを見いだした。
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