研究概要 |
これまでに行った中学校教員、体育専攻学生に対する質問紙調査によって得られたデータの詳細な分析を行った。まず、現職教員が中学校で必修化される武道によって期待される教育効果をどのように認識しているのかを検証したところ、武道担当状況,段位保有状況など学校や担当者の武道への関わりの弱さが教育効果に対する期待を弱めていることが示唆された.すなわち,現時点で体育の授業で武道を行っていない学校,あるいは武道を担当していない教員などはその教育効果を経験する機会に乏しく,よって,武道を通しての伝統教育や対人関係能力の向上などの教育効果を認識できていないことが推察できる. 次に、体育専攻学生の武道指導能力を自己評価させ、武道を専門とする者と専門としない者とで比較したところ、武道を専門とする者はコミューニケーション能力の向上や基礎的な実技、日本の伝統文化や武道の伝統的な考え方を理解させ礼儀正しい態度の獲得についても指導することができると自己評価している様子が窺えた.一方で武道を専門としていない者は、教育基本法等で強調された「武道を通じて我が国固有の伝統と文化に触れさせる」ということや基礎的な知識や実技などの指導に関して、自己評価が低いことが明らかになった。 さらに、武道愛好家の達成目標の比較検討を通して、中学校における「日本の伝統文化の継承」を目的とした武道教育の在り方をあきらかにするためにドイツ・ベルリン在住の柔道家の協力を得て質問紙調査を行い、77名の柔道参加者から回答を得た。本調査で得られたデータと中学校教員、体育専攻学生及び中学生から得られたデータとの比較、検討を行った。
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