研究概要 |
本研究では,トップアスリートのSSC運動理論を応用することによって,高齢者が元気に歩き続けるためのコーチング方法論の開発を目的としている。本年度は,高齢者のSSC運動能力を維持増進,あるいは再建することのできる運動方法を開発しようとした。高齢者の歩行に変化が生じるパターンには,下肢が硬い棒のようになり屈曲しない動態,下肢が屈曲したまま伸びない動態,主にこの2つであることが,これまで推進してきた研究により提案できる。そこで,その動態に変化を生じさせて,柔らかく,しなやかな弾性体となりえる下肢にするためのSSC運動装置を制作し,その方法論について検討した。装置の特徴は,下肢に対して動くロータを左右の脚が交互に受け止めながら,受動的に筋や腱を伸張させながら力が発揮させられるというものであり,重力環境下で生きる人間の自然な運動を強調的に再現することができることにある。また,SSC運動理論からみた走行時や歩行時の経済性を評価するための方法を,連続ジャンプの効率を用いて検討した。跳躍運動の周波数をメトロノームの音に合わせて一定にし,その際の酸素摂取量を計測することによって,経済性を評価することができることが認められた。今後は,さらなる安全性や有効性を検証するとともに,安全性が完全に証明された場合には,歩行に変化の見られる高齢者を対象にして,この装置と方法論を処方し,実際の改善が生じるのかどうかについて介入していく研究を推進する必要があると思われる。
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