研究概要 |
常圧低酸素環境下における滞在やトレーニング効果については,多くの報告がある。しかし,そのほとんどが,高所トレーニングに変わる方法としての,競技能力向上に関する研究である。常圧低酸素システムが民間のトレーニングジムなどにも導入され,一般人にとっても身近なものとなっている現在,一般人の健康・体力つくりや生活習慣病予防に関して検討した報告はほとんど見られない。そこで平成22年度は,健康な男子大学生それぞれ7名に常圧低酸素環境下および常酸素環境下で,最大酸素摂取量の60%で30分間週3回8週間にわたってトレーニングさせた。また同期間,7名の男子大学生を対照群として用いた。トレーニングの前・中・後にすべての被験者の最大酸素摂取量,最大酸素摂取量の50および60%相当時の呼吸筋の酸素消費量,そして身体組成を計測した。その結果,対照群で得られたすべての計測結果には8週間にわたる変化は観察されなかった。両トレーニング群ともに,トレーニング後に最大酸素摂取量は増大したが,常圧低酸素環境下でトレーニングした群の方が、常酸素環境下群よりも有意な増加を示した。また,体重減少も低酸素群で大きくなる傾向を示した。体脂肪率に関しては,年末年始を実験期間に挟んだため,変動が大きかったが,両群ともに減少傾向を示した。運動中の呼吸筋の酸素消費量に関しては,両群ともに有意な変化を観察することは出来なかった。以上のことから,一般人が常圧低酸素環境下で持久的なトレーニングを実施することは,全身持久力を明らかに向上させること,望ましい方向に身体組成を改善することが示唆された。平成23年は,低酸素環境下と上肢を加圧させての筋力トレーニングの効果を比較し,常圧低酸素環境下でのトレーニングが一般人の健康・体力つくりに有効であることを検討したい。
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