本実験では、スプリントの直後に軽い回復運動を続ける運動(スプリント+ジョグ)のトレーニングが、乳酸利用能力を向上させるかどうかについて検討している。平成21年度は、本研究のトレーニング実験に体力的に耐えうる男子大学生を8名募った。トレーニング前の実験運動を終え、5名がスプリント+ジョグ群、3名がスプリントとジョグを別の日に分けてトレーニングするスプリント群として、12週間のトレーニングを行っている。トレーニングを終了した被験者からトレーニング後の実験運動を実施している。 また、トレーニング実験とは別に、血中乳酸濃度が上昇した後の回復運動中の活動筋の量が、血中乳酸濃度の除去(利用)に及ぼす影響を検討した。11名の男子大学生に上肢のレジスタンス運動により血中乳酸濃度を増加させた後に、約80%LT強度での自転車運動を25分間行わせた。実験は自転車運動を両脚と片脚での2試行、および安静状態の合計3試行を実施した。 レジスタンス運動の血中乳酸濃度は両脚試行で6.2±1.5mmol/L、片脚試行で6.9±1.4mmol/L、また、安静試行で7.4±1.6mmol/Lまで増加した。その後の血中乳酸濃度は回復安静時および回復運動中に漸減したが、自転車運動試行は、安静試行よりも早く低下した。両脚試行と片脚試行を比べると、両脚試行において血中乳酸濃度は速く減少する傾向にあったが、速度定数に両試行で差はなかった。このとき運動中の心拍数は両脚試行で高かった。 このことから、自転車運動中では下肢の活動筋の量よりも、心拍数が血中乳酸濃度の除去に影響している可能性が考えられた。
|