運動中に活動した骨格筋で産生された乳酸は、引き続き活動する骨格筋でエネルギー源として酸化的に利用されることが明らかになっている。昨年度、健康な男子大学生を対象として、120%VO_2peakの疲労困憊までの自転車運動を、30分間の間隔で2回繰り返す実験運動を次の2条件で行わせた。1つは、30分間を安静にしている安静試行、他方は血中乳酸濃度の除去(骨格筋での乳酸の利用)が亢進する動的回復運動を行う回復運動試行であった。その結果、血中乳酸濃度の除去は動的回復運動中のほうが有意に速く、血中乳酸濃度の消失が速いほど、2回目の運動パフォーマンスの低下が少ない、あるいは向上する傾向にあった。このような傾向は、安静試行では認められなかったことから、運動中に血中乳酸を利用できることが、運動パフォーマンスにとって有利であることが示唆された。運動中に血中乳酸は酸化的に利用されているので、運動中の血中乳酸利用能力は有酸素的エネルギー供給力と関係しているものと推察される。 そこで本年度は、同様の実験運動における高強度運動中の酸素摂取動態と血中乳酸回復動態の関係を検討した。120%VO_2peakでの高強度運動中における酸素摂取の立ち上がり速度(酸素摂取動態の第2相の時定数)を算出した。また、回復中の血中乳酸の回復速度(定数r1、r2)を計測した。 高強度運動中の酸素摂取の立ち上がり速度と動的回復中の血中乳酸除去速度との間に、正の相関関係が得られると推測されるが、現在、解析中である。
|