研究概要 |
本研究目的は、異なる低酸素濃度が、陸上競技中距離選手の短時間超最大運動時の無酸素的エネルギー代謝に及ぼす影響をについて明らかにすることであった。被験者は大学陸上競技部中距離ブロックに所属する男子学生8名(20土1歳、172.7士3.3cm、62.7土4.6kg)であった。各被験者はもナークの自転車エルゴメータを用いて、最大自転車テスト、超最大運動時のエネルギー需要量推定式を得るための12種類の最大下自転車テスト、および超最大努力によるウィンゲート無酸素テストを9日間に分けて行った。ウィンゲート無酸素テストは、6つの異なる酸素濃度の空気(20.94%O_2、16.4%O_2、15.4%O_2、14.5%O_2、13.6%O_2、および12.7%O_2)をダグラスバックから吸気しながら1日1回行った。ウィンゲート無酸素テスト時のパフォーマンス指標となる相対的パワー出力(W/kg)と平均回転数は、各酸素濃度間で統計的に有意な差は見られなかった。また、運動中の相対的酸素摂取量(ml・kg^<-11>)は20.94%O_2と比較して14.5%O_2で有意に低下したが、酸素需要量および酸素借の相対値(ml/kg)には酸素濃度条件による意な差は見られなかった。しかし、運動時の全エネルギー消費量に対する無酸素的エネルギー代謝割合(%AnAER)は、20.94%O_2と比較して12.7%O_2において有意に大きな値を示した。これらの事実は、無酸素代謝能力に優れている中距離走者では、標高4,000mに相当する12.7%O_2以下の低酸素条件で運動したとき、無酸素的エネルギー代謝の亢進が生じることが示唆された。 現在、さらに一般人を対象とした研究を進めている。
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