本研究は、コーディネーション運動の行動選択能力への影響を、(i) 短期的なトレーニング効果と、(ii) 成長期と成人での影響の違いという2つの実験から検証することを目的とした。 初年度では、成人を対象にコーディネーション運動を実施する事で、行動選択能力が向上するか否かを検証した。行動選択能力については、神経生理学分野で使用されているGo/Nogo選択反応課題と単純反応課題を用いて評価する。前者では、提示された反応刺激の内容に応じて「適切な反応を選択して可能な限り素早く反応する」事が要求される。一方、後者では、「全ての反応刺激に対して素早く反応する」事が求められる。これらの課題の時間差は「行動選択の素早さ」を意味するので、同運動によって、この時間が短縮するか否かを調べる事で行動選択能力への影響を定量的に評価できる。 実験の結果、短時間のコーディネーション運動によって行動選択能力が改善される可能性が示された。このとき、一過性のコーディネーション運動では単純反応時間への影響は観察されなかった。つまり、今回実施した短時間のコーディネーション運動の効果は高次脳機能に限定したものであった可能性がある。 これらの成果は、千葉体育学研究に発表された。
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