本研究課題は、地域スポーツの推進を担う人材育成事業の具体的方策を明らかにしようとしたものであった。とりわけ総合型地域スポーツクラブの持続的発展を担う人材(クラブマネージャー)が主たる対象である。研究成果は次のとおりである。地域スポーツ領域の公的資金は、専門的な団体へ分散配分されている実態が加速していた。自治体財政の縮小下では、公共サービスの質を維持するために数多くの民間非営利組織が、各々の専門性を活かして地域内で活躍するようになっている。地域スポーツ領域における人材育成事業もより専門的な手法や実績のある地域内団体に委ねられる実態にある。育成事業そのものは質の高いものになり、一部の熱意ある人たちはさまざまな学習機会を自ら探索して職能向上を目指す姿が浮き彫りになった。しかしながら一方で、公的資金の分散化によって地域が求める人材と育成事業との間にズレを生み出すことも明らかとなった。こうした課題をどのような手法で克服しているのか。全国の先進的な取り組みを分析すると、ズレをあらかじめ詳細に把握して、自治体と民間非営利組織が地域スポーツ分野においてどのような人材を育成する必要があるのか、その目的(ビジョン)を共有している点が認められた。しかもズレは、改めて具体的なエビデンスデータを収集しなければならない、というものではなく、自治体内、既存のスポーツ関連団体内、地域団体内に根強く残る慣習的な意識や手続きがズレの原因になっていることも明らかになった。意識や手続きの具体的な諸相は、インタビュー調査から詳細を確認することができ。つまり今後、各々の自治体内において、まずもって各種団体のガバナンスの硬直化がどのような原因によって生じているのかを認識できることがわかった。その上で人材育成ビジョンから具現化される育成プログラムが地域内の各種スポーツ組織のスタンダードを構築することであろう。
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