(1)研究手法の熟達(研究方法を充分利用するために取り組むべき前提) まず、質的研究法に関連する先行研究を概観・整理することで、研究手法の熟達を目指した。このことによって、調査の観点や進行方法、タイムスケジュール、インタビューの仕方や観察記録の取り方など、一貫性かつ柔軟性を有する調査マニュアルを作成することができた。 (2)生涯発達心理学研究の優れた知見を概観し、整理する(発達課題についてのレビュー) 生涯発達心理学研究において、これまで導き出されてきた優れた知見を概観し、整理することによって、アスリートがキャリアトランジションに伴って直面する発達課題を予測する。特に、レビンソン(1978)やブリッジズ(1980)によって、人生における過渡期に着目した一定レベルの発達モデルが導き出されている。また、その他の発達モデルを参考にしつつ、インタビュー調査における到達目標を設定した。 (3)アスリートの過渡期における心理・社会的発達課題の検討 対象:元日本代表級アスリートおよび元オリンピアン数名 調査マニュアルを基に、元日本代表級アスリートや元オリンピアンを対象として、集中的なインタビューを実施した。その際、インタビュー資料として抽出するのは、会話の内容を録音して起こした逐語(テキスト・データ)と、「語り」の様子をビデオ収録してコード化したもの(プロトコル・データ)である。そして、それらのインタビュー資料から、「語り」の表象的特徴を分析し、会話分析によるアスリートにとっての「過渡期」の形態や意味づけ、体験様式等を明らかにすることを目指した。
|