本研究は、スポーツチームの競技力向上ならびに試合場面での実力発揮に役立つ心理的サポートのあり方について、スポーツカウンセリングの実践を通じて明らかにしようとする、縦断的かつ実証的研究である。本年度は、これまでに高い競技成績を収めたアスリートに対してインタビュー調査を実施し、スポーツチームの競技力向上、試合場面での実力発揮を促すチームビルディング・プログラムを開発した。この心理教育プログラムは、構成的グループ・エンカウンターに準拠し、エクササイズとしてメンタルトレーニング技法の学習を進める、独自のグループカウンセリングの手法である。このプログラムを、試合期にあるチーム(水泳、バスケットボール、サッカー)に提供したところ、チームメンバー間のソーシャルサポートが活発となり、チームワークの向上、試合での実力発揮に役立つことが確認された。これらの成果を国際スポーツ心理学会で発表し、一部を本学紀要論文として公刊した。また、スポーツチームに入部した大学新入部員に対して、本プログラムを「新入生サポートプログラム」として提供し、その効果を縦断的に検討した。その結果、精神健康度、所属チームへの適応の促進、バーンアウトの予防において有効であることが認められ、その成果を日本心理学会、メンタルトレーニングフォーラム、他において発表した。次年度はこれらの結果をもとに、実力発揮に関わる仮説モデルの修正ならびにスポーツチームの心理状態をアセスメントする尺度が開発される予定である。
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