本研究はスポーツチームの競技力向上ならびに試合場面での実力発揮に役立つ心理的サポートのあり方について、スポーツカウンセリングの実践を通じて明らかにしようとする、縦断的かつ実証的研究である。本年度は、昨年度に引き続きこれまでに高い競技成績を収めたアスリート(N=22)に対してライフラインを用いたインタビュー調査を実施し、スポーツチームの試合場面での実力発揮を促す要因を探った。 その結果、チームの競技力向上のためには、凝集性と集合的効力感を向上させる必要のあることを確認し、一部を専門誌に寄稿した。これらに役立つエクササイズ(リレーション作り、自己理解・他者理解、相互信頼関係の構築、他)を考案し、それを組み込んだ構成的グループ・エンカウンター(SGE)プログラムを開発した。SGEのエクササイズにイメージ技法を組み込んだプログラムでは、メンタルトレーニングの展開に伴って心理的競技能力の向上することを確かめ、成果の一部を本学紀要論文として公刊した。また、このSGEプログラムを「新入生サポートプログラム」として、大学選手権優勝を目指す2つの運動部に入部した大学新入部員に提供し、その効果を追跡確認した。さらに、同様のプログラムを日本代表チームに適用した事例研究では、チームワークの向上、心理的競技能力の改善を認め、このチームは目標とする世界選手権優勝を達成した。これらの成果は国際学会ならびに国内学会で発表した。 また集団状況を可視化するアセスメント尺度の開発も進めており、次年度は実際に調査を開始する予定である。
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