本研究は、スポーツチームの競技力向上ならびに試合での実力発揮に役立つ心理サポートについて、スポーツカウンセリングの実践を通じて明らかにしようとする、実証的研究である。研究の最終年度にあたる平成25年度は、研究目的①に対応し、大学新入部員に対して心理的サポートプログラムを実施した。具体的には、本学強化種目である剣道部、女子バスケットボール部に入部した大学新入運動部員にスポーツ心理学セミナーを提供しながら、所属チームに対する心理的な適応過程を時系列的に検討した。さらに、これまで実施したプログラムの効果を検討するため、参加者にインタビュー調査を実施した。この成果の一部を中国で開催された国際スポーツ心理学会にて発表した。 続いて、研究目的②に応えるため、文献研究から構築された「実力発揮と心理的サポートの因果関連モデル」について、コーチへのインタビュー調査からその精緻化を試みた。その結果、心理的サポートが有効に機能するための具体的な条件として、スポーツチームの要因(集団動機づけ、リーダーシップ、ソーシャルサポート、他)と心理的サポート担当者の要因(研修経験・理論的背景、競技観・人間観、メンタルトレーニング技法)とのマッチングが重要であると示唆された。この成果の一部を体育学会のシンポジウムで発表した。 そして研究目的③に対応して、本年度も引き続き、上記のエッセンスを組み込んだチームビルディング・プログラムを開発し、チームに提供しながら介入効果を検討した。具体的には、試合期にあるアメリカンフットボールチーム、バスケットボール、剣道といった異なるスポーツチームに対して本プログラムを適用し、この研究プロジェクトで開発した「スポーツチームのパフォーマンス予測尺度(仮称)」を用いて、チーム状態の時系列的な変化を検討した。この研究成果の一部は、スポーツ精神医学会のシンポジウムで発表した。
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