研究概要 |
平成23年度は平成22年度に検討した至適水温における水中運動が高齢者の低下した中心動脈伸展性を改善するか検討した。 65歳以上の明らかな疾患に罹患していない健常な男性高齢者6名を対象に検討を行った。 30分間の安静座位の後、安静時における測定を行い、1)陸上座位安静15分、2)あらかじめ測定した最高酸素摂取量の50%に相当する運動強度における15分間の座位自転車エルゴメータ運動を微温(38℃)条件において心窩部までの水位にて施行し、その後、保温に務めながら15分毎に1時間後まで測定を反復した。 体温は、直腸温測定装置(温度ロガーLT-8B、グラム株式会社製)およびプローベ(LT-ST08-11、グラム株式会社製)を用いて直腸温を測定した。中心動脈伸展性の評価として脈波伝播速度測定装置(formPWV,コーリンメディカルテクノロジー社製)を用いて脈波伝播速度を評価し、超音波法による頚動脈コンプライアンスについても測定した。また、電子血圧計による血圧測定を同時に行った。 その結果、陸上座位安静においては、中心動脈伸展性指標に有意の変化を認めなかった。一方、水中運動においては、運動終了後中心動脈伸展性指標の有意の改善を認めた。 加齢に伴い大動脈などの中心動脈の伸展性は低下し、収縮期血圧の上昇および拡張期血圧の低下をもたらす。これらはいずれも冠動脈疾患の罹患リスクを高めることから、高齢者の健康寿命を延長させるためには中心動脈伸展性の低下の改善が重要である。本研究の結果は微温条件における水中運動が運動と温熱の相加効果によって高齢者における中心動脈伸展性を改善する可能性を示唆した点で意義があると考えられる。
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