研究概要 |
3 ball cascade(3BC)は,両手を協調的に動かしてボールを扱うことが必要不可欠な難易度の高い動作である.加えて筋出力を微妙にコントロールし,ボールの投げ上げの高さや方向を一定にしなければ継続することができず,視覚や運動感覚のフィードバックを随時取り入れながら動作を微調整する必要がある.初年度平成22年度の研究結果を受けて,平成23年度は3BC未習得群(novice群)と既習得群(expert群)における3BCモデル映像提示条件下における運動皮質内抑制回路(intracortical inhibition:ICI)および促通回路(intracortical facilitation:ICF)の動態について調べた.経頭蓋磁気刺激(TMS)による運動誘発電位(MEP)の誘発・記録条件およびモデル映像提示条件については前年度と同様であった.ICI・ICFを観察するために2台のTMSをBistimu moduleで接続し,ICIについては刺激間隔3ms,ICFについては刺激間隔12msで2連発TMSを与えた.その結果,ICI,ICFともにすべてのモデル映像提示条件間,被験者間に有意差は認められなかった.これらの結果は,前年度に得られたの結果であるnovice群での3BC映像を見ながらのイメージ想起条件下におけるMEP振幅の増大や,expert群での自己動作イメージ想起時におけるMEP振幅の増大は,運動皮質内の局所回路であるICIやICFに依存した現象ではなく,運動の観察・模倣に関与する他の皮質領域や運動の学習・記憶に関与する大脳基底核や小脳等の影響によるものである可能性を示唆するものと考えられる.
|