研究概要 |
本年度は複雑動作である3玉カスケードジャグリング(3BCJ)を習得していない初心者を対象に,3BCJの学習に伴ってモデル映像提示に伴うイメージ想起(MI)時に生じる運動野の興奮性の増大が,熟練者に見られるモデル映像提示に伴わない自己動作MI時における運動野の興奮性増大へと変化するか否かを調べることを目的とした.被験者は神経疾患のない健常成人のうち,3BCJができない者10名を対象とした,被験者は実験中,安静座位をとり,固定されたテーブルに両上肢を回外位で保持した状態で被験者の正面に置かれたホワイトボードに提示される3BCJモデル映像を観察した.実験条件は1)ホウイトボード上の黒い一点に視点を合わせた状態で安静を保持する条件(control),2)3BCJ映像を観察しMIを行わない条件(obs),3)3BCJ映像を見ながら映像に同調してMIを行う条件(obs+MI),および4)アイマスクを着用した状態で3BCJのMIを行う条件(self-MI)の4条件とした.Control条件以外の3条件では試行終了直後にvisual analog scale(VAS)score測定を行いMI程度の内省報告を得た.また,スキル習得を扱うために被験者1名につき4~6日目の間隔をおいて3回の実験を行い,その間被験者にはジャグリング動作を習得するための練習をするよう求めた.加えて,スキル習得の指標とするため各実験の初めにジャグリングテストを行った.self-MI条件下で実験試行1stと3rd間,2rdと3rd間にVAS scoreの有意な増大が認められた.MEP振幅は,小指外転筋(APM)から記録した運動誘発電位(MEP)振幅がself-MI条件下において実験試行2ndと3rd間に増加する傾向が見られた.したがって,3BCJの学習に伴い被験者のMI想起が自己動作MI時に明瞭になり,手指筋支配運動野の興奮性に増加傾向が認められることが明らかになった.これらの結果は過去2年間に示された本研究結果を支持するものであり,複雑動作学習におけるモデル映像提示効果の初心者に対する有用性を示唆するものと考えられる.
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