短縮性収縮による収縮力の減退は、筋小胞体の機能不全がその大きな要因であることが知られている。筋が引き伸ばされながら力を発揮する形態の伸張性収縮が行われると、筋発揮張力の直後の減少だけでなく2~3日後に減少のピークが発現すること、また遅発性の筋痛が生じることなどから、短縮性収縮とは異なる筋疲労の発生メカニズムが存在することが知られてきている。そこで本研究では伸張性収縮直後、及び回復過程における筋発揮張力と筋小胞体の機能変化との関係について検討する。平成21年度は、伸張性の収縮回数の違いに依存して発揮張力の減退が、興奮収縮連関の機能障害、特に筋小胞体の機能変化に左右されるのか否かを検討した。9週齢のWistar系雄性ラット40匹を用い、これらを伸張性収縮群(ECC)、等尺性収縮群(ISO)及び対照群(CONT)に分類した。ECC群には膝関節角度30~180°で電動式脚伸展装置により電気刺激を伴う脚伸展を、ISO群には膝関節角度90°での電気刺激による等尺性筋収縮を、それぞれ1秒間の筋収縮を100~500回行わせた。筋収縮終了直後、長指伸筋及び前脛骨筋を摘出し、分析に供した。最大等尺性収縮力はECC及びISOとともに100回の筋収縮以降において5%水準で有意な減少がみられた。また、筋小胞体Ca^<2+>-ATPase活性は、ECCでは300回の収縮以降に、ISOでは100回以降に5%水準で有意な減少がみられた。これらのことから、筋収縮に伴う等尺性収縮力の減少にはECCでは300回以降に、ISOでは100回以降において、筋小胞体機能の低下が関与することが明らかとなった。
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