短縮性収縮による収縮力の減退は、筋小胞体の機能不全がその大きな要因であることが知られている。一方、伸張性収縮の筋発揮張力の減少は、直後よりも収縮後2~3日でピークが発現すること、また遅発性の筋痛が生じることなどから、異なる筋疲労の発生メカニズムの存在が指摘されている。そこで本研究では伸張性収縮後の筋発揮張力の減少と筋小胞体の機能変化、あるいは筋線維膜の興奮性の指標となるNa+・K+ポンプ機能との関係について検討した。伸張性の収縮回数の違いに依存して発揮張力の減退が、興奮収縮連関の機能障害、特に筋小胞体の機能変化に左右されるのか否かを検討した。 9週齢のWistar系雄性ラット80匹を用い、これらを伸張性収縮群(ECC)、等尺性収縮群(ISO)及び対照群(CONT)に分類した。ECC群には膝関節角度30~180°で電動式脚伸展装置により電気刺激を伴う脚伸展を、ISO群には膝関節角度90°での電気刺激による最大筋収縮を、100~500回行わせた。筋収縮終了直後、長指伸筋及び前脛骨筋を摘出し、分析に供した。 最大収縮力はECC及びISOとともに100回の筋収縮以降において5%水準で有意な減少がみられた。ECCにおいて、カルシウムイオノフォアを付した筋小胞体 Ca2+-ATPase活性及び、Ca2+吸収速度は、100回の収縮では変化が見られなかったが、200回の収縮で有意な増加が、一方300回以降では有意な減少が認められたが、ISOには変化が認められなかった。Ca2+放出速度及び、Na+・K+ポンプ機能はECCにより有意な減少が認められたが、ISOには変化が認められなかった。これらのことから、ECCに伴う最大筋収縮力の減少には筋小胞体Ca2+放出力、そしてNa+・K+ポンプ機能の減退が関与することが明らかとなった。
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