【目的】ストレスによるうつ様行動の発症を身体運動が予防するか否か、また改善が認めされた場合にはその改善効果に脳の血管新生が関係するか否かについて検討した。 【方法】8週齢の雄C57/BL/6マウスを(1)コントロール群、(2)CUS群、(3)CUS+運動群、(4)CUS+運動+SU1498群の4群に分けて4週間飼育した。(2)~(4)群のマウスにはうつ様行動を引き起こさせるために継続的にChronic unpredictable stress(CUS)を負荷した。(1)-(3)群のマウスには生理食塩水を、(4)群にはVEGF受容体の阻害剤であるSU1498を充填したAlzet浸透圧ポンプを腹腔内に埋め込んだ。運動はトレッドミル速度20m/分、1日60分のトレッドミル走を週6日行わせた。4週間目にBrdUを腹空内投与する。4週間後、強制水泳試験、ショ糖選択性試験等の行動試験を行し、試験終了の翌日、ネンブタール麻酔下で灌流後に脳を摘出し、一晩固定した後、厚さ40μmの切片を作成し、抗BrdU抗体または抗CD31抗体を用いた免疫組織学的分析を行った。 【結果】4週間のCUS負荷によりマウスにうつ様行動が発症した。しかし、運動の継続はうつ様行動の発症を予防し、SU1498投与は運動による抗うつ効果を消失させた。この時、CUSにより海馬の神経新生と血管新生は低下し、その低下は運動により回復したが、SU1498投与により運動による回復は消失した。 【考察】これらの結果より、継続的な運動によりストレス由来のうつ様行動は予防され、その予防効果には運動による海馬の神経新生と血管新生の改善が大きな影響を持つことが 示唆された。
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