研究概要 |
スポーツ現場において、筋損傷に対して微弱電流の局所刺激により、早期に競技復帰可能となることが経験されているが、その詳細な作用メカニズムについては不明である。今回、平成21年度の実験結果を基に、マウス損傷骨格筋に対する微弱電流の修復促進効果について検討した。生後7週齢の雄性マウス(C57BL/6J)を用い、(1)cardiotoxin(10μM, 0.1ml)の筋注による前脛骨筋の筋損傷モデル、および(2)後肢懸垂(2週間)後の再荷重することによるヒラメ筋の微細筋損傷モデルの2種類を作成して検討した。微弱電流刺激(20μA、0.3Hz、250msec)を1日1回60分間、週2~3回の頻度施行し、微弱電流刺激の有無による損傷からの回復を評価した。評価項目は、筋湿重量および乾燥重量、筋タンパク量、HE染色により病理学的評価および免疫染色(Pax7、Laminin、DAPI)による筋衛星細胞の動態とした。また、ウエスタンブロッティングにより特定のタンパク質発現を評価した。その結果、筋損傷あるいは後肢懸垂により低下した筋乾燥重量および筋タンパク量は、微弱電流刺激により回復が促進した。病理学的評価では、微弱電流刺激により壊死-再生サイクルが促進する傾向が認められた。また、骨格筋組織幹細胞である筋衛星細胞は微弱電流刺激により増加した。さらに、タンパク合成に関わる細胞内シグナルの活性化が観察された。したがって、微弱電流は損傷骨格筋に対して組織修復促進効果のあることが組織学的および生化学的に示唆された。今後、微弱電流により活性化される細胞内シグナルを定量評価し、臨床応用への可能性を示す予定である。
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