研究概要 |
加圧トレーニングとは,四肢の根元を適度に圧迫して,筋内の血流を制限した状態で軽度のトレーニングを行うことにより,激しいトレーニングを行ったときと同程度の筋肥大を引き起こすトレーニング方法である。本研究では加圧トレーニングにおける筋肥大のメカニズムを明らかにするため,活性化した筋衛星細胞のモデルとして一般的に使用されている筋芽細胞株を使用し,その増殖速度におよぼす各要因の効果,あるいはそれらの相乗効果を検討した。 本年度では昨年度に引き続き筋肉の収縮運動を模擬した繰り返し伸展ひずみが衛星細胞の増殖におよぼす影響を検討した。筋芽細胞を2%の酸素濃度(低酸素刺激)にて1時間培養する時に,10%あるいは18%の伸展ひずみを0.5Hzで繰り返し与え,その後,通常の約20%の酸素濃度で培養し,その間の細胞増殖速度をアラマーブルー法により計測した。 その結果,通常の運動時の生体内での筋の長さの変化と同程度の10%の繰り返し引張ひずみを筋芽細胞に与えることにより,細胞増殖能が増加することが明らかとなった。しかし,生体内では起こらない18%の伸展ひずみを与えた場合には細胞増殖能が細胞増殖能は変化しなかった。これらのことから,加圧トレーニングにおいて筋肉を周期的に収縮させることは,低酸素低栄養刺激のダメージを緩和する,あるいは低酸素低栄養刺激のダメージからの回復を早める効果があると考えられる。しかし,繰り返し伸展刺激のひずみ量が多ければよいわけではなく,18%繰り返し伸展ひずみを与えた場合には、細胞増殖率の回復を早めるどころか、さらに細胞増殖率を低下させることがわかった。
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