研究概要 |
高等学校科目保健の「現代社会と健康」領域の「精神の健康」及び「生涯を通じる健康」領域の「保健・医療制度と地域の保健・医療機関の活用」を題材として,認知的スキルの育成に着目した保健授業を開発し,研究協力者が公立の高等学校で実際に授業を実施した。その際,授業に関する感想などを生徒に聞くことにより,授業のプロセスに関する評価を行った。その結果,認知的スキルの育成に着目した授業は,通常の保健授業においても,十分に成立しうることが確かめられた。また,認知的スキルのひとつである自己管理スキルに関して,事前・事後調査のデザインを用いた評価を行い,学習により,認知的スキルが高まることが確かめられた。 さらに,次年度以後の計画を先取りし,大学生において,社会的スキルと自己管理スキルとの関連,及び,それらと避妊行動を含む性行動との関連を調査した。その結果,自己管理スキルは,社会的スキルと正の相関を持ちながらも,社会的スキルが早期の性行動を促進するように見えるのに対して,自己管理スキルは抑制的に働くことが示唆され,保健授業において,認知的スキルを育てることの意義がさらに補強される結果となった。このことは,平成22年度以後の認知的スキルを育成する授業の対象領域を拡張する際に参考になるものである。
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