研究概要 |
数社の慢性テレメトリー装置を比較検討し、プライムテック社の装置を選定した。現在、本装置を用いてデータを取得中である。 本年度は、ストレス負荷時の各種行動薬理学的試験におけるマウスの行動や血中コルチゾール濃度、体温などの変化を指標に、主として生薬「呉茱萸」の評価を行った。 以前、オープンフィールド試験において、呉茱萸精油がマウスに対し嗅覚を介した鎮静作用を示すことを示したが、本年度は精油を構成する4成分を分取し、そのそれぞれの活性を検討したところ、それぞれ単独での鎮静作用は無い若しくは弱く、各成分が複合的に形成する香りの効果が重要であることを示した。また、呉茱萸精油は、拘束ストレスによる血中コルチゾール濃度の上昇を抑えた。 我々はまた、これまでに呉茱萸に特有のアルカロイド成分であるエボジアミンが、知覚神経上のTRPV1の強力な作動物質で、体熱産生の増大や末梢循環の改善効果等を示すこと見出している。本研究では、TRPV1刺激が理気作用に関与していると考え、マウスにおけるストレス誘発性冷え評価系を構築し、エボジアミンの冷え改善効果を確認した。すなわち、マウスに強制水泳(25℃、15分)させると体温が低下し、その後徐々に回復するが、直前に絶食ストレス(18時間)・水浸・拘束ストレス(37℃,1時間)を負荷すると、体温の回復が約30分遅延し、90分を要した。本系において、エボジアミン1mg/kgを腹腔内投与したところ、体温の回復速度がストレス負荷無しと同等に改善された。現在、呉茱萸エキスや呉茱萸湯などの冷え改善効果を検討している。また、マウス腸管マグヌス法により、TRPV1刺激活性を有する生薬を探索している。本年度は、呉茱萸中エキスのTRPV1刺激活性成分を探索し、エボジアミン、ルタエカルピンに加え、3,14-ジヒドロルタエカルピンがTRPV1刺激活性を有していることを見出した。
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