本年度は、当研究室で構築したマウスにおけるストレス誘発性冷え評価系において、昨年評価したエボジアミン同様TRPV1アゴニスト活性を有するカプサイシンの投与が、冷え改善効果を示すことを確認した。興味深いことに、エボジアミンやカプサイシンは、投与後血中にほとんど検出できない低用量でも顕著な冷え改善効果を示し、また高濃度のTRPV1アゴニストを反復投与することによるTRPV1脱感作や、TRPV1アンタゴニストの投与でも同等の冷え改善効果が認められた。これらの結果から、TRPV1アゴニストは腸管内においてTRPV1を脱感作することによって冷え改善作用を示している可能性が示唆された。この他、基原植物が同じで修治が異なる生姜・乾姜の伝統的用法の違いや生理活性変化に関して、TRPV1作動活性の変化に着目した解析も実施している。 また、本系において、NO供与体としての機能を有するシトルリンの長期摂取が冷え症状を緩和すること、および血管内皮弛緩因子であるNO生成阻害作用を有するL-NAME投与によってストレスを負荷しなくても同様の冷えが誘発されることから、本系ではストレスにより血流循環の悪化が誘発されていることが示唆された。 慢性テレメトリー装置を心拍変動解析装置と共に活用し、オープンフィールド試験、強制水泳試験、拘束、拘束水浸、レセルピンやLPSなどの薬物投与などによるストレス負荷時の自律神経系の変動、脳内セロトニンの変動、血液中コルチゾールレベルを測定・解析した。その結果、種々のストレス負荷により、これらの指標が変動することが確認できた。現在、ストレスの種類や強度、時間の最適化を検討中である。また、本系において昨年評価を実施したラベンダー、呉茱萸に加え、カモミール、沖縄在来柑橘カーブチーの精油の吸入による効果も検討中である。
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