【目的】これまで高たんぱく質摂取と一過性運動(レジスタンス運動と自転車駆動運動)負荷後の回復期の疲労指標との関わりを検討し、たんぱく質摂取量の如何に関わらず疲労尺度は運動後に上昇することから今年度は同じ食事組成、評価指標を用いて運動負荷を行わない条件下でのたんぱく質摂取量の影響を検証した。 【研究計画】対象は男子大学生7名、エネルギー摂取量が等価(200kcal)の高たんぱく質食(HP:たんぱく質エネルギー比で50%)または低たんぱく質食(LP;たんぱく質エネルギー比率で10%)を摂取した。クロスオーバー比較試験とし、ウオッシュアウト期間は1週間。疲労尺度の評価はタンパク質を摂取する前に第1回目(摂取前)、食事摂取45分後、90分後、120分後、150分後の合計5回実施し、心拍数は食後180分まで連続的に評価した。評価項目は血糖、インスリン、血中遊離アミノ酸コルチゾールなどの血液成分、視覚認知課題に対する反応時間、課題への正答数および主観的疲労尺度とした。 【結果】摂取45分後のインスリン濃度はHP群がLP群に比べて有意な低値を示したものの、血糖値、遊離脂肪酸、中性脂肪総たんぱく質、コルチゾール、尿酸、乳酸の各濃度には有意な変動が見られなかった。一方、血中遊離アミノ酸濃度は食事摂取90分後から150分後までHP群がLP群に比べて有意に増加した。中枢性疲労仮説の指標とされるトリプトファン/分岐鎖アミノ酸(Trp/BCAA)比率はHP群で摂取90分後から有意に低下した。さらに、心拍数は有意な時間の主効果が見られ、食事摂取後の時間経過とともに両群で上昇傾向にあった。主観的疲労尺度および視覚認知課題への反応時間は両群間に有意な差は見られなかったが、正答数はHP群がLP群に比べて有意に低値を示した。 【結論】運動負荷を行わない条件下でのたんぱく質摂取は摂取後の時間経過とともにTrp/BCAA比率を低下させるものの、視覚認知課題への正答数は低下し、中枢性疲労が増大する可能性が示唆された。
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