若手医師が安全で事故のない外科手術が行えるよう教育することを目的に本研究を開始した。手術は術者と助手の共同作業で行われるため、各々の役割をいかに具体的に記録・提示できるかが課題となる。 【成果1】高画質マルチアングル撮影システムの構築 術者と第一助手の各手術手技を双方向から同時にビデオ撮影できるシステムを構築した。撮影には小型移動式クレーンにハイビジョンカメラを設置したもの2セットを用いた。1セットは小型HDVカムコーダー(HVR-V1J)を、1セットは旋回型HDカメラ(BRC-Z700)を用いた。手術室という限られた空間において2方向から撮影する問題点を小型カムコーダーと旋回型カメラを用いることで克服した。特に旋回型カメラは術者の顔横に設置できるため術者の目線と同一の場面を撮影できた。さらにカメラを180度旋回させることで術野を妨げることなく助手の目線と同一の場面を撮影できた。従来の撮影方法ではカメラを移動させたり術野をさえぎったりする問題点があったが本システムにより改善された。 【成果2】同時再生技術の開発 2台のカメラをハイビジョン画質で同一画面に記録するためには高額な編集機材(約5000万円)が必要である。したがって、教育に際してはSD画質にダウンコンバートして用いることにした。画質は従来のアナログテレビ画質であるが術者と第一助手の役割を把握するには十分な画像であることが確認できた。ただし、詳細な状況を確認したいときには1カメラのみの映像をハイビジョン画質で再生し教育に用いた。 【成果3】定型的手術の撮影 肝切除術を撮影し若手外科医の指導に採用した。順次、ライブラリーとして完成させ、一部は外科学会などで公表予定である。
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