研究概要 |
平成21年度は,認知行動療法に基づくストレスマネジメントを実践する一環として,実践者となる教師の側に焦点を当て,その理解の向上を試みた。具体的には,養護教諭を対象として,「行動科学的アプローチ」に関する基礎的知識の教授を行うことによって,ストレスマネジメント実践を含む健康相談活動に対する知識,自己効力感,実行の程度が上昇するかどうかを検討することを目的とした。まず研究1では,養護教諭を対象として,最も経験率が高く,その問題性の理解の際に心理的な背景を念頭に置く必要がある「保健室頻回来室児童生徒」にどのような対応をしているのかに関する自由記述を行った。KJ法を用いて分類を行った結果,受容的態度,教育的支援,連携・校内体制の活用,専門家へのコーディネート,来室児童生徒の情報収集,訴えに対する見立てと判断の6カテゴリ計24項目が得られた。続く研究2おいては,養護教諭33名を対象として,この態度チェックリストへの回答に基づきクラスター分析を行ったところ,「受容的態度重視群」,「課題解決的対応重視群」,「平均的受容群」の3クラスターが得られた。そして,三項随伴性に基づく児童生徒の行動の理解を中心とした研修会を実施し,これらの養護教諭の態度の特徴によって健康相談活動に対する自己効力感の変化が異なるかどうかを検討したところ,知識そのものはすべての群で身についた一方で,自己効力感に関しては,平均的受容群のみが他の2群に比べて上昇したことが示された。また,実行の程度に関しては,受容的態度重視群のみが上昇したことが示された。したがって,養護教諭の健康相談活動に対する態度の特徴によって,行動科学的アプローチに関する知識教授の効果が異なることが示された。以上の結果を踏まえると,普段からの教師の児童生徒にかかわる態度を考慮に入れて,ストレスマネジメントの実践を行う必要性があることが示唆された。
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