研究概要 |
平成22年度は,認知行動療法に基づくストレスマネジメントを実践する一環として,児童生徒が所属する学級集団の要因に焦点を当て,その理解の向上を試みた。学級集団を基盤としたストレスマネジメントを実践する際には,これまで児童生徒同士の相互作用が暗黙のうちに仮定されていたものの,それらを具体的に考慮に入れた介入実践はほとんど行われてこなかった。そこで相互作用を「仲間モニタリング」によって操作を行うことによって,従来型の介入実践に比べて効果の向上がみられるかどうかの検討を行った。研究1では,小学4年から6年生524名を対象として,従来型介入実践を行う群,従来型介入実践に仲間モニタリングを加える群に振り分けた。仲間モニタリングの操作は,介入実践前5日間にわたる仲間のモニタリング回数をベースラインとして測定した後,従来型ストレスマネジメント実践に加えて,仲間に積極的に働きかける課題を課すことによって行った。そして,従来型介入を行う群と比較して,仲間モニタリングを加えた群における介入実践後5日間にわたる仲間のモニタリング回数がベースラインよりも増加しているかどうかによって,操作チェックを行った。その結果,仲間モニタリングを加えた群において,不適切なコーピング行動が有意に減少していることが示された一方で,児童生徒のストレス反応の有意な変化は認められなかった。研究2では,中学1年から3年生476名を対象として,研究1と同様の手続きを用いて実践介入を行った。その結果,全体的にストレス反応の有意な変化が認められたが,群間差は認められなかった。以上の結果から,児童生徒の相互作用の操作は,学年が低いほど効果が期待できる可能性が示唆されるが,仲間モニタリングの操作方法が十分に機能していなかった可能性もあることから,学級集団の相互作用を記述,操作する方法論を今後検討していく必要性があると考えられる。
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