研究概要 |
平成23年度は,認知行動療法に基づくストレスマネジメントを実践する一環として,児竜生徒が所属する学級集団の相互作用に焦点を当て,ストレスマネジメントの効果を高めるための方法論の構築を試みた。児童生徒の生きる力を心理学的にとらえた場含,さまざまなストレッサーを経験したとしても,白分自身が有すコービングリソースに照らし合わせて,適切にコービングを選択して、実行できる能力ととらえることができる。しかしながら,認知行動療法の理論に従えば,ストレス反応を低減するために有用なコービング行動が一時的に実行されても,それが強化される環境が整っていなければ,コービング行動が持続的に実行される可能性は低減してしまうことが予想される。児童生徒においては,友人ストレッサーのインパクトが大きいこと,生活の多くの時間を学校環境で過こす必要性があることを踏まえると,学級集団の相互作用は,ストレス反応の低減に有用なローピングの実行を大きく左右する環境要因であると考えられる。そこで,小学4年から中学3年生365名を対象として,学級集団の相互作用がストレスマネジメントの実践効果に及ぼす影響の程度を検討することを目的とした。ターゲットスキルとしては,共通して仲間への入り方を選定し,それぞれの各学年の発達段階を考慮して具体的な場面を設定した。また,相互作用の測定に関しては,ビデオ映像を用いてターゲットとなる児童生徒と周囲との応答数をカウントした。実践を行った結果,実践そのものは関しては,これまでに報告されている実践結果の傾向とほぼ同様の結果が得られたが,学級集団の相互作用の影響性に関しては,ほとんど見いだすことができなかった。この結果は,相互作用の質的な評価が適切に行われていないことに起因していると考えられることから,今後は全体的なアセスメント方法そのものを改善し,再検討する必要があると考えられる。
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