「ストレス度アンケート」を用いたストレス度調査は試験期間とはかけ離れた時期(非ストレス期間)と試験期間の直前(ストレス期間)とで行い、2時点での点数の変化を検討した。その変化は、対象者個々において一定の傾向はなく、まちまちであった。この結果から、試験期間の直前が必ずしもストレス期間として妥当でないことが判明した。したがって、精神的ストレス負荷として日本版レーヴン色彩マトリックス検査を用いることにした。 その検査の前後で、心循環モニタリング装置のアルテットCとアストリムSUによる測定結果の比較を行った。ストレス負荷によって、アルテットCによるHFは低下し、LF/HFは上昇した。また、アストリムSUによる血管幅とアルテットCによるLF/HFとの間で有意の負の相関を示した。ストレス負荷により副交感神経活動は抑制され、交感神経活動は亢進することや末梢静脈血管幅は交感神経活動の上昇に伴い縮小することが証明された。 クラシック音楽聴取によりLFやLF/HFが有意に低下した。音楽聴取前の静脈酸素化指標(VOI)は、HFとの間で負の相関が、また、LF/HFとの間で正の相関がそれぞれ認められた。さらに、「ストレス度アンケート」点数とLFとの間では、音楽聴取前後ともに、有意な正の相関がみられた。したがって、クラシック音楽聴取後には交感神経緊張度が減少したことが示された。また、聴取前の安静時には、VOIが副交感神経活動とともに減少し、交感神経活動とともに上昇することが判明した。さらに、音楽聴取の前後とは無関係に、交感神経機能は主観的なストレス強度に伴って上昇することが示唆された。 以上の研究から、2つの心循環モニタリング装置を組み合わせた多角的なパラメータ解析により、ストレス強度の判定を客観的に行えることが示された。また、受動的音楽療法の効果判定にも応用できることが証明された。
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