本年度は、昨年度に試作した焦点調節緊張を緩和するための光学的視覚刺激装置の改良を行い、装置の効果について検証した。 1.装置の改良:変動するヒトの屈折度(見かけの遠点)は、調節の弛緩が誘起されるとより遠視側に移動する。従って、その変化に応じた視標の移動を可能とし、調節弛緩への効果をより確実とするために、屈折度に対する視標移動のフィードバック機構を搭載した。 具体的には、まず視標が最も遠方で最も開散側に移動したとき、視標の移動を一定時間停止させ、この間の屈折度を測定した。屈折度が遠視側に偏位、つまり調節が弛緩した場合には、両眼それぞれにフィードバックさせ、遠視側に偏位した+分を加え、調節及び開散刺激量を増し、より調節を弛緩させる方向へ光学的に刺激した。 2.装置の効果に対する検証:より良い効果を導くために、至適な刺激条件(施行時間と調節刺激量及び輻湊・開散刺激量など)の決定を行い、効果に対する検証を行った。 屈折異常のない健常者を対象として、近業を視作業として負荷し、調節順応やNITM(near induced transient myopia)を人為的に誘導した。負荷前後で、視力検査と屈折検査及び調節機能検査を行い、装置施行群と未施行群で比較した。その結果、装置を施行することで調節順応とNITMを緩和することができ、かつ最も効果のあった視標移動量(調節と輻湊・開散刺激量)と視標速度及び刺激の長さ(施行時間)を決定した。
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