研究課題
若年肥満者における運動・栄養処方を検討するために、「肥満者での食生活と運動習慣に対する調査」と「若年男性でのカロリー制限と運動介入」を行った。生活と食環境に関する自己式アンケート調査(BMI32.5±3.0kg/m^2、年齢21.7±2.7才の男性42名を対象)では、全体の40%に欠食習慣があること、53.7%で体重測定をしないこと、68.3%で食べる速度が早いこと、75.6%で自覚的健康感がよいとは思っていないこと、との結果であった。さらに、食事摂取頻度調査では、食品群と栄養素摂敢状況には個人差が大きいこと、野菜の摂取量が少なく嗜好飲料の摂取量が多いこと、といった特徴がみられた。これらの食習慣の現状を把握し、個々の特性に合わせた栄養教育を若年者から行うことは、慢性疾患予防に大きく貢献する。カロリー制限(基礎代謝に基づき決定したカロリー摂取量の最大20%減)と、中等度強度の有酸素運動(最大酸素摂取量の60%の強度)とレジスタンス運動を30日間行った。対象は、BMI22.4±1.9kg/m^2、年齢25±10才の男性であった。介入前後において体重が平均6kg、脂肪率が平均4.3%低下し、1)HOMA-IRとブドウ糖負荷試験時のインスリン分泌量が低下し、インスリン抵抗性が有意に改善、2)白血球数と高感度CRPで示される慢性炎症指標の低下、3)体重減少と独立した介入前後での基礎代謝量の低下、が示された。一方で、DHEA-Sは有意に低下し、高分子アディポネクチンについては変化を認めなかった。この介入試験結果は、肥満のない若年の男性であっても、カロリーを制限し運動を行うことで、癌、動脈硬化などの主要な疾患の基盤病態であるインスリン抵抗性と慢性炎症状態を改善することを示している。
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