平成21年度は、皮膚から放出される一酸化窒素(Nitric Oxide : NO)濃度が運動に伴う筋の損傷の指標となり得るか否かを確かめようとした。被験者は、少なくとも6ヶ月以内に大腿四頭筋の筋損傷を伴う運動を行っていない健康な男子大学生7人(22.1±0.3歳;平均±標準誤差)とした。被験者は、大腿四頭筋の伸張性収縮を伴う膝伸展、屈曲運動を15 repetition maximum(RM)、8セット行い、運動前、運動終了1、2、3、7日後に大腿直筋の筋腹皮膚表面上から皮膚ガスを採集し、オゾン化学発光法によってNO濃度を測定した。また、大腿四頭筋の伸展における筋力(1RM)、大腿周径囲、大腿直筋の筋腹における筋痛指標(visual analog scale : VAS)ついて測定した。 皮膚ガス中NO濃度は、運動終了2日後に有意(p<0.01)に上昇し、7日後には回復傾向が認められた。また、各被験者の運動後の皮膚ガス中NO濃度ピーク値は運動前の値に比べ約1.4倍と有意(p<0.01)に高かった。大腿周径囲は運動前後で有意な変化が認められなかったが、筋力は運動終了1日から3日後まで有意(p<0.05)に低下、一方、VASは有意(p<0.05)に増大したが、筋力、VASともに7日後には運動前の値に回復する傾向が認められた。以上、本研究で見られた筋損傷に伴う皮膚ガス中NO濃度の増大は、筋力低下や痛みを反映する可能性が示唆された。
|