研究概要 |
生下時体重と成人後のBMI,血糖値の関係についての検討 【目的】最近倹約表現型仮説という用語からDOHaD (Developmental origin of Health and Diseases)という用語が使用される機会が増えている。生下時体重と成人後のBMI、空腹時血糖値の関係について検討する。 【対象・方法】健康診断受診者を対象として、生下時体重や妊娠分娩時の情報を質問票を用いて収集し、空腹時血糖値やインスリン値、糖代謝、脂質代謝に関与する因子(HbAlc、インスリン、TG、T-Chol、HDL-C、肝機能、腎機能、血算など)を測定した。 【結果】対象の平均年齢は52才、BMI22、生下時体重3097gであった。 生下時体重と現在の体重の関係について検討すると、現在の体重は生下時体重約2800gの群が最も低値となり、これより生下時体重が大きい群もこれより生下時体重が小さい群も現在の体重が大きかった(生下時体重を横軸に、現在の体重を縦軸に取って両者の関係を見ると、U字型となる)。 また空腹時血糖値の正常高値とされる100mg/dl以上の割合が、2800g以下の群で高値を示した。また特に生下時体重が小さく、現在肥満しているものでその割合が高値であった。生下時体重2800g以下の群について、生下時体重と現在の空腹時血糖値との関係を単回帰分析で検討すると、有意の負相関が認められた。 【考案】 日本人において、生下時体重が低い群は、現在の体重が大きく、空腹時血糖値は高いことが示された。オランダ飢餓の冬研究において、妊娠中に飢餓を体験した母親から生まれた児の成人後の耐糖能異常の頻度が高いことが明らかとなった。近年我が国において低出生体重児の頻度増加が問題とされており、その原因として妊娠中もダイエットを行うことによる不適切な栄養摂取の可能性が指摘されている。妊娠中は適切な栄養摂取により、児の過剰も不足もない体重増加を得ることが、成人後の適切な体重や血糖値につながる可能性が示された。
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