研究課題
【目的】本年度は、低圧低酸素環境下での水中運動トレーニングが安静時、および運動時循環系応答の経時的変化を明らかにし、メタボリックシンドローム改善に対する効果的運動処方プログラムを確立することであった。【方法】被検者は特に疾患を有さない健康な若年成人男性(22±1歳)とし、通常環境でトレーニングを行う常圧群(8名)、標高2000m相当の低圧環境下でトレーニングを行う低圧群(8名)に分けた。トレーニングは50%VO2max相当の水中運動とし、1回30分間(低圧低酸素暴露は計2時間)、週4回の頻度で、8週間行われた。トレーニング前、開始1週、2週、4週、8週後に、安静時血圧、血流依存性血管拡張反応(FMD)、心臓足首血管指数(CAVI)および同一最大下運動時の血圧、心拍出動態、最大酸素摂取量について測定した。【結果及び考察】8週間のトレーニング後、常圧群においては全ての指標において有意な変化は認められなかった。一方、低圧群では、最大酸素摂取量、および安静時血圧の変化は認められなかったが、トレーニング開始後1週目から%FMDの増加傾向、およびCAVIの低下傾向が示され、2週目にはどちらも有意な変化(P<0.05)が認められた。また、中強度運動時の循環応答に関してはより早期から変化が認められ、1回拍出量、心拍出量の有意な増大(P<0.01)、および平均血圧、総末梢抵抗(血圧/心拍出量)の有意な低下(P<0.01)が観察された。以上の結果をまとめると、若年健常人を対象とした標高2000m相当の低圧低酸素環境下での水中運動は、およそ1週目から動脈スティフネスの低下に伴う末梢抵抗および血圧の低下をもたらし、心臓の後負荷を軽減させることで、1回拍出量、並びに心拍出量の増大をもたらすことが示された。
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