研究課題
【目的】本研究の目的は、低圧環境下における運動タイプの違いがメタボリックシンドロームの危険因子の変化に及ぼす影響について明らかにすることであった。【方法】健康な成人男性36名(23±3歳)を、常圧環境、または海抜2500m相当の低圧環境で、水中運動か自転車運動を行う4群に振り分けた。トレーニングは、50%VO_2max相当の強度で1回30分(低圧環境暴露は計2時間)とし、連続5日間行われた。トレーニング前後に、同一最大下運動時の循環応答、血液性状、身体組成について測定し、効果を評価した。【結果及び考察】5日間のトレーニング後、常圧環境下でトレーニングした群では、運動の違いに関係なく、ほぼ全ての指標において有意な変化は認められなかった。一方、低圧環境で水中運動を行った群では、血管拡張能を反映した血流依存性血管拡張反応の増加、動脈スティフネスの指標である心臓足首血管指数の有意な低下といった血管機能の向上が認められた。また、運動時の血圧は有意ではなかったものの低下傾向にあり、1回拍出量、心拍出量は有意に増大した。血液性状については、空腹時の血中脂質、血糖値などすべての指標において有意な変化は認められなかったが、糖負荷試験によるインスリン感受性の向上が認められた。さらに、形態、身体組成については、体重、体脂肪率、腹膜前脂肪厚の有意な低下が認められた。しかしながら、自転車運動群においては、体重、体脂肪率の低下は認められたが、心血管応答や血中脂質、糖代謝に有意な変化は認められなかった。以上の結果から、1)低圧環境下における運動は、常圧環境のそれより、メタボリックシンドロームの危険因子改善により効果的であること、2)またその効果の程度については、運動のタイプ(おそらくは筋張力、機械的刺激の違い)によって影響を受けることが示唆された。
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