研究概要 |
受動的ストレッチによる骨格筋の糖取り込み機構について検討した。マウスヒラメ筋に生体長から生体長の120%になるよう1Hzのストレッチ刺激を与えると、糖取り込みの増加が認められた。この糖取り込みの増加は、筋小胞体(SR)からのカルシウム遊離を抑制するダントロレンやシクロピアゾニックアシドにより抑制された。また、ストレッチ誘発性糖取り込みはcalcium/calmodulin dependent protein kinase II(CaMKII)の阻害薬KN-93により抑制された。しかし、EGTAにより細胞外カルシウムを除去しても、ストレッチ誘発性糖取り込みは髭響されなかった。さらに、ストレッチ誘発性糖取り込みは、機械的刺激のセンサーの一つと考えられているインテグリンを阻害するRGDペプチドにより抑制された。また、インテグリンが機械的刺激を受容することで活性化されるfocal adhesion kinase(FAK)がストレッチ刺激により活性化された。さらに、FAK阻害薬PF-573,228によりストレッチ誘発性糖取り込みが抑制された。一方、ラット骨格筋由来培養筋芽細胞株であるL6細胞を分化させた多核筋管細胞にストレッチ刺激を加えると、一過性の細胞内カルシウム濃度の上昇が認められた。また、L6細胞をコラーゲン中で三次元培養して作製した人工筋組織において受動的ストレッチ刺激による糖取り込みの増加が認められ、この糖取込みの増加は抗インテグリンβ1抗体で抑制された。以上の結果より、骨格筋において受動的ストレッチ刺激はインテグリンにより感受され、FAKを介して細胞内に伝達されSRからのカルシウム遊離を引き起こすこと、また、この遊離カルシウムによりCaMKIIが活性化され糖取り込みが亢進することが示唆された。
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