研究概要 |
平成23年度は前年度実施した介入試験(内臓脂肪を効果的に減少させる運動プロブラム)にて得た検体を分析した.最終的な対象者はメタボリックシンドローム(MetS)もしくはその予備群にあたる男性41名で,そのうち31名を介入群,10名を対照群とした.両群ともに平均年齢45.4歳であった.介入群は前年度までに確立した16週間のプログラムを実施し,採血および各測定は運動プログラム開始前とプログラム終了後に実施した.対照群は介入群と同様の検査のみ行った.測定項目は得られた血液サンプルを用いて一般生化学検査およびアディポサイトカイン,動脈硬化・糖尿病のサロゲートマーカーとしてPWV,HOMA-Rを測定した.【結果】16週間に及ぶ運動プログラム実施の結果,介入群は体重平均-6.0kg,腹囲平均-6.8cm,内臓脂肪面積(VFA)平均-29%と各々有意な減少を認め,MetSの診断基準項目のうちHDL-Cを除いて有意な改善が認められた.炎症性サイトカインであるTNF-α,CRPは各々平均-21%,-11%と有意な減少を認めたが,IL-6に変化は認められなかった.総アディポネクチン量(T-Ad)は平均+17%,高分子量アディポネクチン量(HMW-Ad)も平均+26%と有意な増加を認めた.T-Adの変化とVFAの変化の間に有意な負の相関関係,さらにTNF-αの変化との間にも有意な負の関連が認められたことから,運動プログラムにより内臓脂肪量が減少し,内臓脂肪組織の慢性炎症が改善することによって,アディポネクチンが増加した可能性が示唆された.一方他のアディポサイトカイン(レプチン,レジスチン,ビスファチン,レチノール結合蛋白)は各平均-46%,-12%,-23%,-9%と有意な減少を示した.動脈硬化・糖尿病のサロゲートエンドポイントとしてHOMAR,PWVを測定したところ,HOMA-Rには介入前後で有意な減少が認められたが,PWVは変化が認められなかった.以上の結果から16週間のプログラム実施により,アディポネクチンだけでなく,多くのアディポサイトカインが改善したことも動脈硬化予防に寄与するものと考えられた.
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