研究概要 |
【目的】高血圧発症者の運動療法のモデルとして、高血圧発症後(15週齢)10週間の自発走トレーニングを自然発症高血圧ラット(SHR)に行わせた。21年度は脳における酸化傷害マーカーの検出、および抗酸化酵素の測定を行うことにより、運動トレーニングがSHRの脳の酸化傷害に及ぼす効果を検討した。【方法】15週齢のオスSHRを非運動群、および10週間の自発走トレーニング群に分けた。5および15週齢SHRを高血圧発症前,直後のコントロールとした。各SHR群から速やかに大動脈血管と脳を摘出し、細胞を分画後、酸化傷害マーカーとして、4-ヒドロキシノネナール(HNE)を時間分解蛍光イムノアッセイ法で定量し、抗酸化酵素類はウエスタンブロット法で定量した。【結果】可溶性(S)画分でのHNE量は5,15,25週齢非運動群で有意差はなかったが、運動群で減少した。ミトコンドリア(Mit)画分では25週齢非運動群のHNEが上昇したが、運動はその上昇を抑制する傾向を示した。25週齢においては、活性酸素発生系酵素のNADPH oxidaseやキサンチンオキシダーゼ量が増加したが、運動による変化はなかった。抗酸化酵素では、S画分とMit画分のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)が25週齢で有意に増加し、Mitでは運動トレーニング群での更なる増加が見られた。【結論】SHRの10週間の高血圧持続は大脳での活性酸素発生を増加させる。しかし、同時に抗酸化酵素一種(GPx)の量も増加する。運動はその抗酸化酵素の更なる増加を生じさせ、その結果酸化生成物であるHNEの生成が軽減したと考えられる。【意義】(1) 高血圧の持続は大脳に於いても酸化傷害を引き起こすが、運動はそれを改善する。(2) その改善の仕組みの一端としてGPx酵素量の運動による増加が明らかになった。
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