研究概要 |
本年度は、膝痛・腰痛を有する虚弱高齢者が、介護予防運動プログラムへ参加することにより、医療費や受療行動がどの程度抑制できているのかについて検討を行った。特に、総医療費や入院費、外来費を指標として、介入群と対照群を追跡調査することにより、プログラムの医療経済的評価を行った。介入群は、平成19年度に実施した水中運動教室参加者および終了者(51名)のうち、国民健康保険加入者である34名について、平成22年3月末までの国民健康保険の医療費データが入手できた23名である。対照群は、国民健康保険住民台帳の中より(観察期間中死亡、転出を除く)、介入群1人につき、生年月、性別、居住地域を対応一致させた約3名をランダムに抽出し、期間内に教室に参加していない75名である。分析に使用した国保医療費は、教室実施の2年前(平成17年度)~終了2年後(平成21年度)までの国保レセプトから、歯科診療医療費を除いた全ての医療費を教室の実施時期に合わせ、一人当たり月間、3ヵ月間、6ヵ月間、年間の累積を算出して使用した。その結果、介入群の月間一人当たり医療費点数の開始前、終了後、終了3ヵ月後、終了6ヵ月後、終了1年後の変動は、いずれの期間中においても有意な差異はみられなかった。しかしながら、通院日数は開始前の平均2.8日から、終了3ヵ月後には平均1.3日、終了6ヵ月後には平均1.8日と有意な減少がみられた。対照群の月間一人当たり外来医療費点数は、開始前の11,242点から終了後には18,054点、終了3ヵ月後は27,126点、終了6ヵ月後は22,799点、終了1年後には33,817点と推移し、有意な増加が認められた。今回実施した水中運動教室により、外来医療費や入院医療費に顕著な抑制効果に認められていないものの、月間一人当たり平均医療費は、介入群に比べ対照群では有意な増加がみられた。
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