研究概要 |
食事、サプリメント中のコエンザイムQ10は小腸で吸収されるが、その吸収機構は不明である。我々は、糖タンパク質サポシンBがコエンザイムQ10と複合体を形成し、脂溶性のコエンザイムQ10を可溶化することを見出した。更にサポシンBが腸管に存在すること、その存在が管腔側に局在していることを見出している(未発表データ)。 本研究は、コエンザイムQ10の小腸における吸収機構の解明、特にコエンザイムQ10結合蛋白質サポシンBの役割解明を目的とする。 研究初年度は下記3点を遂行した。 (1)ヒト結腸癌由来Caco-2細胞の3次元培養手法を確立した。Caco-2細胞の分化とタイトジャンクションの形成は、電気抵抗値測定(Millicell-ERS, Millipore社)手法により確認した。 (2)3次元培養したCaco-2細胞のApical側(管腔側)に酸化型のコエンザイムQ10を投与し、細胞への吸収とBasal側への輸送を検討した。コエンザイムQ10はCaco-2細胞に取り込まれ、還元されて、還元型のコエンザイムQ10がBasal側に分泌されることを確認した。またBasal側に分泌されたコエンザイムQ10は主にリポプロテイン分画に含まれることを確認した。 (3)遺伝子工学手法を用いてサポシンB高発現Caco-2細胞株およびサポシンBノックダウン株を作製した。 次年度以降、(3)で作製したCaco-2細胞株を3次元培養し、(1)、(2)で確立したコエンザイムQ10輸送機構の解析を行う。本検討により、コエンザイムQ10の小腸吸収機構が解明されると、吸収効率に大きな個人差があり、必ずしも吸収効率の優れてはいないコエンザイムQ10を効率よく吸収する手法の確立に寄与することが期待される。
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