研究概要 |
細菌およびウイルス感染初期の病原体分子を認識するToll様受容体(TLRs)と身体活動性との関連性について検討を行った。 Salmonella感染初期の免疫応答に及ぼす身体活動の影響について、Salmonella鞭毛タンパク質フラジェリン(FG)を認識するTLR5を刺激することによる血漿TNF-α濃度の変化から評価した。実験動物にはC3H/HeN雄性マウスを使用し、身体活動として走運動を負荷した。運動負荷はFG誘導性血漿TNF-α濃度の上昇を有意に促進した。マクロファージのTLR5発現はアドレナリン刺激で抑制されたが、腸管上皮細胞のTLR5発現は、逆にアドレナリン刺激で亢進した。Salmonella鞭毛タンパク質に対する免疫応答は、身体活動によって高まる可能性が示された。 さらに、RNAウイルス感染初期の免疫応答に及ぼす身体活動の影響については、dsRNAを認識するTLR3をpoly I:Cで刺激することによる血漿TNF-αおよびIFN-(α-β濃度の変化から評価した。走運動負荷後、poly I:C(5mg/kg,i.v.)を投与し、血漿TNF-αおよびIFN-α/β濃度をELISA法にて測定した。また、マクロファージ細胞にカテコラミンを添加し、poly I:C刺激に対するTNF-αおよびIFN-α/β応答性を評価した。poly I:C誘導性血漿TNF-α濃度の上昇は身体活動で有意に抑制されたが、血漿IFN-β濃度の上昇に影響を与えなかった。血漿IFN-αはいずれも検出感度以下であった。マクロファージ細胞のpoly I:C誘導性TNF-α産生はアドレナリンおよびドーパミン刺激で抑制された。しかしながら、in vivo実験と同様に、IFN-β産生はアドレナリン、ノルアドレナリンおよびドーパミンいずれの刺激でも抑制されなかった。poly I:C誘導性のIFN-β応答の結果から、抗ウイルス性サイトカイン応答は、身体活動によって抑制されないことが明らかとなった。
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