前糖尿病者の発症を防ぎ、糖尿病予備軍を増加させないことが急務である。そのためには予備軍を早期に検出し、現状を認識させ、適切な運動・栄養指導により、生活を変容させ、発症を防ぐことが重要である。しかし、糖尿病の診断には採血や来院の必要があり、これらのことが検診率に影響し、予備軍の早期検出の障害となっていた。 本研究は、家庭での採取が容易な尿を用いた新しい検査法(糖尿病リスク・プロファイリング法)を導入し、まず、1)糖尿病予備軍の積極的な検診への参加を促し、現状のリスクを認識させること、さらに2)運動・栄養指導により意識と行動の変容を促し、その効果を新しい検査法により評価し、指導にフィードバックさせること、そして3)生活の変容を定着させ、糖尿病の発症を予防することを目的とする。 本年度は、血管障害性や炎症性に関与する尿中バイオマーカー(TNF-αやPAI-1、CRP)の高感度測定法を開発し、その糖尿病リスク指標としての有用性を検討した。その結果、CRPは糖尿病患者で有意に高値を示し、糖尿病の評価指標としての有効性が示された。そして、これまでのインスリンやsIRα、レジスチン、レプチンと合わせることにより、新しい糖尿病リスクアセスメントを行える見通しが得られた。また、ほんの最近、尿中アディポネクチンが糖尿病性腎症の早期診断マーカーになりうる可能性も示された。今後、さらに詳細な検討を行って行かなければならない。
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