前糖尿病者の発症を防ぎ、糖尿病予備群を増加させないことが急務である。そのためには予備群を早期に検出し、現状を認識させ、その後の適切な運動・栄養指導により発症を防ぐことが重要である。そこで、報告者らは、家庭で自ら採取し提供できる尿や郵送可能な濾紙血を試料とした新しい検査法(数種類のバイオマーカー濃度を点数化した糖尿病リスク・プロファイリング法)を導入し、前病者の積極的な参加を促すユニークな糖尿病リスクの早期検出法を一部開発し、試験的に実践している。 バイオマーカーの中で、特に、糖尿病リスク指標として、遊離インスリン受容体α、レジスチン、インスリン、レプチン及びアディポネクチンの尿中及び血液ろ紙中の測定の有効性を証明した。その結果、尿中の遊離インスリン受容体α、レジスチンおよびインスリンは糖尿病患者で有意に高値を示し、尿中のこれらのバイオマーカーを組み合わせることにより、糖尿病リスクが推察できる様になった。 一方、血中のアディポネクチンは糖尿病患者で低下するにも関わらず、尿中アディポネクチンは有意に増加していた。そこで、健常者、肥満者および糖尿病患者の内、尿中にアルブミンが検出されない(微量アルブミン値も除く)対象者中の尿中アディポネクチンを測定した所、糖尿病患者尿中で有意に高値を示した。この尿中アディポネクチンは高分子重合体(500KD)であった。 さらに、推察糸球体濾過量(eGFR)が低値を示す対象者では、尿中/血中アディポネクチン比は、健常者の数十倍を示し、早期腎障害指標としての可能性も示唆された。まや、これらのことから、尿中アディポネクチンの増加は、単に糸球体の濾過障害に起因するとは考えがたく、アディポネクチンのこれまでの機能から考え、初期障害が起こった腎による糖尿病予防ホルモンとしてのアディポネクチン分泌の可能性も考えられる。
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