研究概要 |
【目的】心疾患の危険因子の一つである高トリグリセリド(TG)血症の成因を網羅的に解析できるシステムの構築を目的とする。とくに、血清TG分解の主酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)蛋白が低値(LPL正常値の50%以下)を示す場合、確定されたLPL遺伝子異常に環境危険因子が負荷し、高TG血症となるが、LPL蛋白低値にもかかわらず、従来法によりLPL遺伝子に変異が見つからないケースに注目する。 【成果】 (1)LPL遺伝子自体に変異がある場合:(1-1)大きな欠損や付加変異の存在の検討。我々が見いだしたLPL遺伝子5'上流からイントロン1の途中を含む約54kb欠失変異について、簡便に検出する系を構築し、高TG血症者90名で、その変異の有無を調べたが、見いだされなかった。 (1-2)高TG血症者から、新規変異として、S193R変異を見いだした。 (2)LPL遺伝子自体には変異がない場合:自己免疫性疾患の一種で全身性エリテマトーデス患者を経験した。患者は血清TG値が10,000mg/dl以上の高TG血症を呈しており、LPL活性および蛋白とも検出できなかった。患者のLPL遺伝子は正常であったので、LPLに対する自己抗体ができているものと考えられた。LPLに対する自己抗体検出のためのウエスタン法のシステムを構築し、調べた結果、LPLに対する自己抗体が産生されたために高TG血症を呈したことがわかった。なお、血清TG水解に関わるもう一つの酵素である肝性トリグリセリドリパーゼに対する自己抗体は産生していなかった。
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