【目的】心疾患の危険因子の一つである高トリグリセリド(TG)血症の成因を網羅的に解析できるシステムの構築を目的とする。とくに、血清TG分解の主酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)蛋白が低値(LPL正常値の50%以下)を示す場合、確定されたLPL遺伝子異常に環境危険因子が負荷し、高TG血症となるが、LPL蛋白低値にもかかわらず、従来法によりLPL遺伝子に変異が見つからないケースに注目する。 【成果】 1. 我々の施設と他施設からの2検体について、まず従来法でLPL遺伝子変異の有無を調べたが見いだされなかった。よって、本課題の対象の検体として2検体が追加された。これらに関しては来年度、更なる解析を行う。 2. LPL遺伝子自体には変異がない場合として、LPLに対する自己抗体が産生されたために高TG血症(10000mg/dl以上)を呈したことが昨年度明らかにされた自己免疫性疾患の一種である全身性エリテマトーデス患者に関して、さらなる解析を行った。患者のLPLに対する自己抗体はIgA型であることがわかった。この自己抗体を含む血漿は容量依存的にLPL活性を沈降させた。食事療法と免疫抑制剤であるシクロホスファミドパルス療法に伴って、患者のLPL活性値およびLPL蛋白量は、次第に正常化し最終的に、発端者の血清TG値は82mg/dlと正脂血化した。
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