過去3年間に質的調査を2回、計量調査を1回行った。本年度は、調査の再分析を行うとともに、これまでの調査研究のまとめを行い報告書を作成した。再分析では、親の介護のあり方(介護規範、感情労働の状況、介護の社会化)と家族関係(親子関係・夫婦関係・きょうだい関係)について明らかにした。 計量調査は、親の介護経験がある中年期の女性219名、男性108名の合計327名である。質的調査は、計量調査の対象者から了解が得られた主たる介護担当者の女性7名、男性2名の合計9名である。 計量調査から得られた主な知見は次の通りである。1)男性の場合、感情労働における理解対応およびプラスの感情維持と夫婦関係の間には正の相関がある。2)男女ともに、介護において配偶者の援助が得られている場合には、夫婦関係がよい。3)男性で、主な介護者として関わった場合や介護負担を感じている場合は、きょうだい関係がうまくいっていないという割合が高い。4)女性で配偶者以外の援助があった場合、ない場合に比べて、きょうだい関係がうまくいっているという割合が高い。5)女性でホームヘルパーを利用した場合、利用しなかった場合に比べて、きょうだい関係がうまくいっていないという割合が高い。 質的調査から、「過去の親子関係や嫁姑関係が親の介護に影響すること」「親の介護はきょうだい関係に影響すること」「親の介護は夫婦関係に影響すること」「介護によるストレスを解消するには介護から一時的に離れるための自己投入できる活動が必要であること」を対象者の語りからクローズアップした。 報告書は、3部構成となっている。第I部インタビュー調査-感情労働に影響する要因を探る-、第II部アンケート調査-感情労働の尺度化、感情労働に影響する要因、および感情労働と家族関係を中心に-、第III部インタビュー調査-親の介護は家族関係にどのように影響しているか-。全153頁。
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