研究概要 |
母親就業世帯において、仕事と育児の時間的葛藤,すなわち,一方の役割を行うことによりもう一方の役割遂行が時間的に困難になる問題に焦点を当て,その対処行動を明らかにするために、まず、統計的検討を行った。その内容については、「家族類型別にみた夫婦のいる世帯における妻の就業状態の変化-6歳未満の-子どものいる世帯を対象として」と題して学会発表を行った。また、仕事と育児の両立支援の社会的資源について検討を行い、その内容については「病児・病後児保育の社会化の進展と生活資源の開発」と題し日本家政学会生活経営学部会編集の著書にまとめた。さらに、母親就業世帯における子どもの病気時の育児への対処行動の実態とともに、対処のために利用する資源のタイプ別にみた世帯の特徴を明らかにすることを具体的目的として、東京都東部、千葉県西部の認可保育所14保育所の保育園児の保護者を対象に、質問紙調査を行った。保育所を通じて調査票を配布した。調査時期は2009年10月~11月である。調査票は母親票父親票を組にして1760世帯に配布し、回収は719世帯分であった(回収率40.9%)。主な結果は以下の通りであった。(1)母や父が仕事を休むのが難しい日に、子どもが病気のために保育所を休むことが「なかった」が20%で、そのうちの67%は母親か父親が対応可能という理由であった。このタイプを「常時対応可能型」とし、休みにくい日が「あった」と回答した者を4分類し合計5つの対処型を設定した。対処型の割合は、「常時対応可能型」15%、「親のみ対処型」18%、「親・親族対処型」51%、「親・外部資源利用対処型」8%、「親・親族・外部資源利用対処型」8%であった。(2)親族との行き来にかかる時間、世帯形態、職場の環境、母親の年収、母親の仕事の形態などの項目で5つの対処型と関連が認められた。(3)5つの型と母親と父親の病児の世話の担当得点には有意な差が認められた。以上の分析により、仕事と育児の時間的葛藤への対処行動の実態を明らかにすることができた。
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